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エッセイ

御八つ、お三時、三時ですよ

 こうしてスパゲッティ・ナポリタンを初めて体験してからの僕が、なにかと言えば店でナポリタンを食べる子供になったかというと、そんなことはなかった。ナポリタンを作ってくれるよう、母親に頼む子供にもならなかった。なぜなら、この時代には、うどん玉というものがあったからだ。
 うどん玉とは、茹でたうどんを太くて長い箸で一人前ほどの量を適当につかみ上げておおまかに丸め、玉のような形にしたものだ。細い割り竹や葦あしなどで平らに編んだ簾すというものがあり、これを木製のテーブルのような台の上に広げ、その上にうどん玉はひとかたまりずつ、直接…

底本:『ナポリへの道』東京書籍 2008年

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