オートバイはぼくの先生
自動車は面白くもなんともない。乗っていても、すぐに飽きてしまう。たったいま書いたように、窓がテレビジョンのように思えてきて、退屈このうえない。それに、自動車でいくら長距離を走っても、自分の車の室内には、いつもの生活のにおいとかたちが残りつづけ、解放感などありはしない。
自動車の中にすわってハンドルを握りながら考えることなんて、たいていはろくでもないことだ。考えても考えなくてもどちらでもいいようなことをぼやっと考えつつ、うつろな目で外を見ている。
オートバイは、飽きない。見ただけで、胸がときめく。自分の…
底本:『アップル・サイダーと彼女』角川文庫 1979年
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