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評論・エッセイ

オン・ロード

 道路は、たしかに、きわめて日常的で陳腐な光景だ。
 だが、ひとたびオートバイにまたがって走れば、魔法のサーキットになる。
 道路がただ道路でしかない人に、魔法のサーキットについていくら語っても、らちはあかない。
 しかし、ぼくやあなたなら、あそこのあの道路を愛するオートバイで走っていて、魔法にかかる瞬間を、よく知っている。
 魔法の復習をしてみよう。
 オートバイと路面との関係は、着実で厳格だ。前後ふたつのタイアは、路面を相手に保つべき一定の関係を、まともに走って…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『彼の後輪が滑った』太田出版 1996年
『コーヒーもう一杯』角川文庫 1980年所収

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