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評論・エッセイ

『結婚の生態』一九四一年(昭和十六年)

「石川達三の小説『結婚の生態』から、良き結婚生活精神の建設を新たな物語に描いて──」という文章が、冒頭でスクリーンに映し出される。原作は当時のベストセラーだったという。若い優秀な新聞記者がひとりの女性と知り合い、結婚して結婚生活を営むようになるという、それだけの話だ。この話がなぜ「新たな物語」なのか、この話のどこが「良き結婚生活建設の精神」なのか。そのことについて書くには、まずぜんたいのストーリーをあらまし見渡しておかなくてはいけない。
 若い新聞記者は佐野二郎という。両親はすでにないが、法律事務所を経営している弁護士の兄…

初出:『映画を書く──日本映画の謎を解く』ハローケイエンターテインメント 一九九六年
底本:『映画を書く──日本映画の原風景』文春文庫 二〇〇一年

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