その光を僕も見た
広島に原爆を投下したアメリカ軍の爆撃機の副操縦士は、その任務に関して、原爆投下を中心に十一ページにわたる簡単なメモのような記録をのこした。『ニューヨーク・タイムズ』の記者に依頼されたからだという。その依頼がなければ、投下するのが原爆ではあっても、すっかりルーティーンになってしまった爆撃ミッションのひとつとして、イン・フライトの記録が残されることはなかったのだろうか。
副操縦士によるこの直筆のメモがロンドンの競売商によってニューヨークで競売に出され、三十五万ドルで落札された。このことを伝えた日本の新聞の短い記事によると…
底本:『自分と自分以外──戦後60年と今』NHKブックス 2004年
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