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評論・エッセイ

僕がもっとも好いている海岸

 マウイ島のぜんたいを上空から見ると、人の胸像を横から見たような形をしている。その顎の下あたりにあるマアラエアから30号線を西にむけて自動車で走るのが、僕は子供の頃からたいへんに好きだった。ほかの場所もいいのだが、マウイの西側を海沿いに西へ、というコースは特にお気にいりだ。ラハイナからさらに西へ、胸像の頭のてっぺんに至るまでのルートは最高だ。
 30号線はいまでもホノアピイラニ・ハイウエイと呼ばれている。ハワイに白人が到達する以前の時代にマウイのチーフだったピイラニにちなむ名称だ。「ホノ」は湾という意味だ。カアナパリから…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『僕が書いたあの島』太田出版 1995年
『アール・グレイから始まる日』角川文庫 1991年所収

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