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評論・エッセイ

銀の鱗に陽ざしを受けて

 銀鱗煮干し、というものを七百グラム、いま僕は片手に持っている。ポリエチレンの透明な袋に入っている。銀鱗とは魚の鱗のことだ。そこから意味は広がって、魚ぜんたいをも意味する。いま僕が片手に持っている銀鱗は、片口鰯だ。片口鰯のなかでも最高級品であると袋にはうたってある、小羽銀つきの煮干しだ。袋のなかの煮干しは、長さが平均して六センチから七センチだろうか。ほっそりとした体のすべてが煮干しとなり、頭も含めて胴体の側面が微妙な銀色に乾いている様子には、油絵で描く対象として、得難いものがあるのではないか、などと僕は思う。
 この片口…

底本:『白いプラスティックのフォーク──食は自分を作ったか』NHK出版 2005年

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