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エッセイ

世界でいちばん怖い国

 カーヴした静かな道からかなり高くなったところに、いまの僕の仕事場の建物がある。道の側にあるいくつかの窓から、カーヴしているその道のいくつかの地点を、それぞれ見下ろすことが出来る。ふと窓の前に立ち、なにげなく道を見下ろすと、老人が歩いている。見ていると次々に老人が道にあらわれる。どう見ても老人にしか見えない人たちが、いかにも老人の服を着て、たいそう老人らしく歩いていく。
 おなじ年齢の女性たちにくらべると、男のほうがはるかに老人的だ。老人は男性名詞だ。歳をとった男性、それが老人だ。年配の女性たちも数多く歩いていくが、窓か…

底本:『坊やはこうして作家になる』水魚書房 2000年

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