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評論・エッセイ

『日米会話手帳』という英語

『日米会話手帳』という出版物について僕が初めて知ったのは、いつのことだっただろう。二十代の前半ではないか、という推測はもっとも妥当だ。それ以前にすでにこの本について知っていた記憶はない。戦後世相史のような記述のなかで、瓦礫の山だった戦後の日本で最初のベストセラーとなった出版物、というようなごくありきたりで間接的な知りかたを、僕はまず体験したに違いない。
 昭和二十年、一九四五年八月に、戦争は日本の敗戦で終わった。そしてその年の十月に、『日米会話手帳』という本は出版された。それから十二月までのあいだに、つまり出版されてから…

底本:『日本語で生きるとは』筑摩書房 1999年

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