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評論・エッセイ

だから三歳児は泣いた

 二十五歳のとき、僕は自分の写真をすべて捨ててしまった。ゼロ歳から二十五歳までのあいだに、僕の手もとにいつのまにか蓄積した写真、たとえば誕生日に撮った写真やどこかへ旅行したときの記念写真、親戚の人や友人たちが、なにかのときに撮ってくれたスナップ写真など、一枚も残さずに捨てた。
 何冊ものアルバムに貼ってあったり、整理されないままに靴の空き箱やクッキーの空き缶などに入れてあった写真を、そしてネガのあるものはネガも、みんな捨てた。そのような写真が身辺にあるのが、うっとうしかったからだ。捨ててせいせいした気持ちになった。僕にも…

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