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『イエスタデイ・ワンスモア』など短篇小説4作品を公開

1975年から1977年にかけて『問題小説』および『別冊問題小説』誌上で発表された『イエスタデイ・ワンスモア』など短篇3作品、ならびにSF専門誌『奇想天外』にて1977年に発表されたSF短篇『時の過ぎゆく果てに』の1作品を本日公開しました。

 仕事を終えて自宅へ帰る電車の中で居眠りをし、本来降りるべき駅を意図せず乗り過ごしてしまった31歳のサラリーマン・松谷明平。そのまま隣の県の急行停車駅で降り、パチンコなどで遊んだ後、食事をしようと繁華街のはずれにある1軒の店に立ち寄る。そして店の美人おかみと一夜を過ごすことになるのだが……。当時人気があった、純文学と大衆小説の間に位置する「中間小説」を掲載する雑誌『問題小説』に掲載された1篇。ここでも片岡義男流の文体と描写テクニックは健在だ。

(『問題小説』1975年新年特別号掲載)

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 カリフォルニアに四国よりも広大な畑を持つカーライル・オレンジ社で、新入社員として働くことになった吉武昭夫。その会社は、かつて日本から移民としてアメリカに渡った農業労働者たちが開拓した畑から始まった会社であり、昭夫の祖父はその労働者の1人だった。東京での面接を経て、渡米した昭夫が四代目の社長に案内されたのは、マジョリティのための大量生産を行うため、最新技術を尽くした「電気オレンジ」の畑だった。そして、その日の夕暮れ、社長はもうひとつの別の場所へと昭夫を案内する。そこで彼が見せられたものとは。そして、大量消費社会での企業の効率化追求と良心の相剋を受け止めた昭夫は……。

(『別冊問題小説』1975年秋季特別号掲載)

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 イチゴという名の、とても素敵な17歳の女の子がいる。ほっそりとしていて、自分では女なんて感じていない。でも、それだけに他人から見ると余計に女のエッセンスのようなものが感じられる。そんな彼女がアパートの浴室で、浴槽いっぱいに熱い牛乳を満たした。今日は彼女の誕生日。長い間念願だった牛乳風呂にこれから入るのだ。体を洗い終え、これから湯船に入ろうという時、彼女はあるアイデアを思いつき、電話のダイアルを回す。

(『別冊問題小説』1976年冬季特別号掲載)

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 地球全体を揺るがすような凄まじい風と、それによって引き剥がされた、大きな湖の水面や入江の海面が、逆巻く波となって吹き飛ばされ続ける。そして、山の間の谷にある途方ない大きさの氷河が、少しづつ割れては入江の海に落下し砲撃のような音を轟かせる、大陸の南の果ての村。この地で暮らす68歳の未亡人・エブリンは、3年前からこの氷河が崩れて折れる日を待ち望んでいた。とてつもなく過酷な風と波、そして氷河の崩落を迫力ある描写で描きつつ、そこで起こったひとつの奇跡を描いた片岡義男流のSF短篇。過酷な自然環境とそこで暮らす人々の姿自体が、ひとつの物語を生み出している。

(『奇想天外』1977年4月号掲載)

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2024年6月14日 00:00 | 電子化計画

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