VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

お知らせ

エッセイ『彼とぼくと彼女たち』、『永遠の緑色』を公開

エッセイ『彼とぼくと彼女たち』(新潮文庫/1986年)、および『永遠の緑色』(岩波書店/1990年)を本日公開いたしました。

主人公が彼、ぼく、彼女たちである40篇の物語。テーマは旅、写真集、ペーパーバック、子供の頃の思い出など多岐にわたる。2歳年上のオートバイ乗りの「彼」との奇妙な共同生活。横浜中華街で買った台湾のレコードにあった歌謡曲。2年間続いた素晴らしい関係を終えることになった彼女と彼。1958年に1年間だけ所有したシヴォレーのべル・エア・ハードトップの思い出。自身が作ろうとする写真集のモデルになってほしいと、彼女を口説く彼……。時間と場所を自由に行き来しつつ、ショート・ストーリーと自身を語ったエッセイなどで構成された、どこからで読めるアラカルト作品。

(『彼とぼくと彼女たち』新潮文庫/1986年)

こちらからお読みいただけます

40年ほど前はどこでも川や海、山などの自然が身近にあり、そのすべてが遊び場だった。「自然と付き合う」などと考えたこともなく、自分で遊び方を工夫するのが当たり前だった。しかしそうした自然は進歩や発展、あるいは開発の名の下に、わずかな時間の間に可逆の限界をとっくに越えた破壊と汚染が行われた。そのことには企業だけでなく消費のシステムにどっぷりと浸かってきた日本人全員が加担しており、つけを払うのも全員なのだ。人間は、地球の一方的な利用しかしてこなかった。かといって後戻りすることはできない。これまでとは全く別質のテクノロジーを生み出さなくてはいけないのだ。
こうしたことはシエラ・クラブの発行した5冊の本を読むことでも発見できる。人間は、地球から消える覚悟を持った上で、消えるための計画を立てるべきなのだ、手遅れにならないうちに。うまくすれば、人間はその人工的な文明に対して、人工的な様相にふさわしい有終の美を飾ることができる。

こちらからお読みいただけます

模型の魅力や能力に、僕は子供の頃から強くひかれ続けている。模型は、世界を縮小して抽象化し、その抽象の先端にある針先のような具象によって、世界を理解する最初のきっかけを作り出すものだ。そして博物館はそのような模型の宝庫だ。博物館に展示してあるものの前をめぐり歩いていると、それまでまるで知らなかったことについて、瞬時のうちに知ることが出来る。例えば子供の頃に見た島の模型は、海底からのびあがってきた一本の円錐だ。その内部には数万年という膨大な量の時間が湛えられている。島の頂点に立つことは、時間のてっぺんに立つということなのだ。
他に2台のオートバイで1本の川を縫い上げるように走る物語、プールにまつわる6つのショート・ストーリー、都会を離れた野外での、一杯の熱い紅茶の効用についてのエッセイを収録。

こちらからお読みいただけます

「自然と向き合う人」を主題とした3つのストーリーが展開する。
・第1話
来週の月曜日の午後、仕事でオーストラリアに向かうことなっている彼は、少し早めの彼女への誕生日プレゼントを思いつく。百貨店でフォーションのティー・バッグ、好みのミネラル・ウオーター、携帯用のクッカー、シエラ・カップを購入し、電車で郊外へと向かう。そして町を見下ろす高台で、彼女のために1杯の熱い紅茶を作る。
・第2話
共にオートバイ乗りである彼と彼女が語り合う、オートバイにまつわる24のショート・ストーリー。夏の思い出から始まる、驚くような自然のもてなし。旅で遭遇する小さな、しかしいつまでも忘れられないミステリー。オートバイによる旅で体験する、ほんとに小さなドラマはどれもこれもそれっきりだが、常に自然がそばにある。だからいつまでも、忘れない。
・第3話
「ロッキー山脈を東側へ越えてどのあたりまでいけば、ふりかえってもロッキーが見えなくなるのか、それだけを知りたくて、僕はロッキーを西から東へ越えにいったことがある」。気障な男だと彼女は思った。しかし時を経て、その旅をオートバイで行うのは大変に澄み切った正解なのだと彼女は考えるようになった。そしてロッキーを超えて東へ向かう、「一千マイルを二十時間で走る」というツーリングに参加する。

(以上3作品、『永遠の緑色』(岩波書店/1990年)収録)

こちらからお読みいただけます

2023年9月29日 00:00 | 電子化計画

このエントリーをはてなブックマークに追加