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評論・エッセイ

彼とぼくと彼女たち

 彼はぼくよりふたつ年上だ。おなじ大学のおなじ学部を卒業している。先輩にあたるわけだが、二歳ちがいなら、先輩であると同時に、親友にもなりうる。彼はぼくのことを、「おい、片岡」と呼ぶ。いつでも、かならず、「おい」が、つくのだ。
 このふたつ年上の友人についての物語をどのへんから書いたらいいだろうかと思いつつこうして書きはじめていまふと思い出したのは、彼とのつきあいがはじまってまだ間もないころ、秋の夜ふけに、「おい、片岡」と、彼から電話がかかってきたときのことだ。「俺の家はどこだったかな」と、彼が、そのとき電話でぼくにきいたの…

『彼とぼくと彼女たち』晶文社 一九八三年所収(10、20、22、26、29の5篇を除く35篇)
底本:『彼とぼくと彼女たち』新潮文庫 一九八六年

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