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連作詩『より良いことを選択しながら』より6作品を公開

連作詩『より良いことを選択しながら』より6作品を本日公開いたしました。

「より良いことを選択しながら」というタイトルは、ポーランドの詩人で1996年にノーベル文学賞を受賞したヴィスワヴァ・シンボルスカ(1923- 2012)の詩集『終わりと始まり』(1997)の帯の言葉から採られたもの。
 この詩の中には片岡義男が作った言葉はひとつもなく、すべて「外」にあったものだ。そうした視覚や聴覚を通して届いた言葉をメモ帳とボールペンで採取し、一篇の詩へと配列してできたのがこの作品だ。採集した期間は、2014年の秋から2015年の春にかけて。ごく限られた範囲ではあるが、ポスターや告知板、駅、電車など街にはいたるところに言葉があふれており、読書の対象には事欠かなかったという。

(『現代詩手帖』2018年7月号掲載)

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 自分自身の言葉はどこにもないのに、ページに美しくレイアウトされて並んでいる言葉のすべてに、ごく軽い既視感がある。これは自分だ、と言ってもいいほどにどの言葉にも見覚えがある、と片岡義男は言う。家を出て駅に入った瞬間から、目的地に降りて商店街を歩き、その果てに立ち止まるまで、ああしろ、こうしろと言われ続けることが連続する。よく見ると、注意喚起や警告の言葉に並び、何かを売るための広告の言葉などが非常に多いという。

(『現代詩手帖』2018年8月号掲載)

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「食べるもの、あるいは、食べることをめぐる言葉」も街にあふれている。食べるものはすべて店舗で販売されているのだから、当然のこととして値段もついている。言葉のおしまいにはすべて値段の数字がある。そして市販されている食べものの値段は、給料に反映している。給料が抑制されるなら、街で買う食べ物の値段も抑制される。「個室ございます」「大盛り無料」「1000円飲み放題」「全品30%OFF」などは、まるでユートピアの出来事ではないのか。

(『現代詩手帖』2018年10月号掲載)

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 仕事で必要性があって購入した歌謡曲のシングル盤が700枚ほどある。このシングル盤から曲のタイトルを列挙していくと、収集された詩の試みになるのではないか、と友人から提案され並べてみた。順番には意図はなく、年代順に、A面とB面をセットで並べていく。何の恣意も加えずに、ただ並べていくと、そこには詩的ななにかが生まれてくる。

(『現代詩手帖』2018年11月号掲載)

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 #4に引き続き、シングル盤の歌謡曲のタイトルを並べていく。「友情のうた」「若い灯りをともそうよ」「涙の太陽」「とどかぬ思い」「さよならはダンスの後に」「妹よ」……。そうするうちに、シングル盤専用のターンテーブルでシングル盤を聴きたくなる。部屋いっぱいではなく目の前に歌謡曲がある、という状態にするために、1対の優秀な小さなアクティブ・スピーカーで聴きながら位置を調整し、ベストな位置を見つけたい。

(『現代詩手帖』2019年1月号掲載)

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 日本の東京での電車内の広告では、いったいなにが広告されているのか。2018年の11月から12月の終わりまで、いつもの電車に乗るたびに広告の文言をメモ帳に書きとめ、並べ替えたものがこの詩だ。事前に友人からもらったメモには電車内広告の方針が7つ列挙してあった。いつもの電車にもこの7つが跋扈しているのだろうか。並べ替えて読んでみると、そこはたいそう不思議な世界だ。駅まで歩いて電車に乗るだけで、このような世界に入ることが可能という世界の中に、私たちは生きているのだ。

(『現代詩手帖』2019年2月号掲載)

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2022年11月8日 00:00 | 電子化計画

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