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「短編小説の航路」 新着3作品を公開

書き下ろし作品「短編小説の航路」の新着3作品『あの餃子を二人前』『なぜかふたつずつある』『バラッドの終わりかた』を公開しました。片岡義男.comだけで読める作品です。

吉村夏彦は27歳でフリーランスのライターだ。木曜日の午後五時に、ひとりで餃子を食べた。その帰り道、山崎美也子から電話があり、土曜日にいつものホテルで待ち合わせる。ふたりはおなじ高校を出て10年になる。吉村は「将来に関する、はっきりした希望や見通し。そんなものがあるの?」と美也子に問われる。翌日の日曜日には吉村が美也子を木曜日とおなじ餃子の店に誘う。餃子を食べ終わると美也子は「30歳までに作家になるのを目標にしたらいいわ」と言う。27歳という微妙な年齢のふたりだが、餃子をいっしょに食べれば、フリーランスの仕事は作家へと続いていることがはっきりと見えるようになるのだった。おいしい餃子には、こんな効用がある。

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最近の片岡作品の主人公には小説を書く人が多い。片岡義男にとって最大の関心事は小説を書く人なのだ。43歳の主人公・三浦卓也はライターであり、短編小説も書いている。三浦卓也は六月のその日、二子玉川、大門、神保町と三つの場所にある編集部を訪れて、打ち合わせをおこなう。その三つの編集部へ行く道順と、打ち合わせの内容は具体的で楽しい。
もうひとつの主題は、ひとりで暮らす、ということで、これも最近の片岡作品の主人公が望む生きかただ。三浦卓也には、松原弘美という同棲相手がいたのだが、ストーリーの始まりではすでに同棲を解消していて、この日は最後の荷物を彼女が取りに来る日でもあった。同棲した理由は切実であり、同棲を解消したのもまた切実な理由だ。もとのひとり暮らしに戻った三浦卓也は彼らしさをとり戻して、快適だ。

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「短編小説の航路」シリーズのなかではこれまででもっとも短い一編。前半では33歳で独身の作家、辻堂圭子がどのようにして作家となったのかが明らかにされる。大学生のときに書店でアルバイトを始めたことから展開していく作家への道は辻堂圭子の歴史だろう。
後半は、33歳の作家・辻堂圭子の現在だ。彼女は部屋でいつものようにスニーカーを履き、届いたばかりの新しいシャツを着て、小説雑誌に依頼された短編小説をどのように書くのか考えている。「このLPを小説に」という企画で、ジョン・コルトレーン四重奏団の「バラッズ」をあてがわれた彼女は、収録されている8曲を聴き楽譜を読み、さまざまな分析をこころみる。バラッドをどのように小説にしていくのか、辻堂圭子の思考に身を委ねてみよう。

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2022年6月3日 00:00 | 電子化計画

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