なぜかふたつずつある
最近の片岡作品の主人公には小説を書く人が多い。片岡義男にとって最大の関心事は小説を書く人なのだ。43歳の主人公・三浦卓也はライターであり、短編小説も書いている。三浦卓也は六月のその日、二子玉川、大門、神保町と三つの場所にある編集部を訪れて、打ち合わせをおこなう。その三つの編集部へ行く道順と、打ち合わせの内容は具体的で楽しい。
もうひとつの主題は、ひとりで暮らす、ということで、これも最近の片岡作品の主人公が望む生きかただ。三浦卓也には、松原弘美という同棲相手がいたのだが、ストーリーの始まりではすでに同棲を解消していて、この日…
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