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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

酸っぱい酸っぱい黄色い水

 戦後の小学校で僕より学年で一年だけ下だった男性が、小学校で体験した給食について、かつて僕に語ってくれた。彼のそのときの言葉を出来るかぎり思い出し、口調も写しながら、僕が再話してみよう。
「コッペ・パンというものは、給食で食べる以前に、すでに知っていたように思うんですよ。いまで言うパン屋さん、田舎のバス停の前にあるような、なんでも売ってるようなパン屋さんですね。これが自分の家の近所にあって、そこでコッペ・パンを売ってたのです。ひとつのコッペ・パンを横にふたつに切って、炊飯器ほどの大きさの缶に入っていたジャムを、へらですく…

底本:『白いプラスティックのフォーク──食は自分を作ったか』NHK出版 2005年

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