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評論・エッセイ

友だちの家で食べた

 友だちの家で初めて食べたものが、僕には多いような気がする。印象が強く残り、したがっていまでもよく覚えているものを三つだけあげると、寒天、芋粥、そしてカレーライスとなる。
 寒天は武家屋敷の別邸に住んでいた友だちのところで食べた。この友だちのお母さんは、色白細面に細身なで肩を絵に描いたような、和風の美人だった。いつもきちんと着物を着ていた。敗戦から二年目あたりだったか、黒蜜が手に入ったので作ってみたからお食べなさい、と言われて友だちとふたりでおごそかな座敷のテーブルで食べた。黒蜜とは黒砂糖を煮詰めて作ったものだろうか。<…

底本:『白いプラスティックのフォーク──食は自分を作ったか』NHK出版 2005年

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