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エッセイ

それはいまもこの黄色なのか

 二十代の前半から後半にかけての数年間、キャンベルの缶詰スープをしばしば食べた、という記憶がかすかにある。主として朝食だったと思う。自分で買っていたのは確かだが、それがどこだったか思い出せない。僕ひとりでどこかへ買いにいき、紙に印刷されたあの赤と白のレイベルを巻いた缶に、僕は手をのばしていたのだ。赤い色に手をのばしたのか。赤い色には楽しげな安堵感があるではないか。それとも白い色のすっきりとした無駄のなさに、惹かれるものがあったのか。あるいは、キャンベルズと書いた英文字の書体に、吸引力があったのか。
 いろんな種類があった…

底本:『白いプラスティックのフォーク──食は自分を作ったか』NHK出版 2005年

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