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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

物価とはなにか

 物価が総体的に下がっている、という説は疑ってみる必要がある。なにかの統計にあらわれた数字だけを見ているとそう思える、というだけのことではないか。単体として価格が下がったものは確かにある。中国、東南アジア、南アメリカ、東ヨーロッパなどが、市場へ急激に参加したことによって、多くの製品の価格は低下した。どこか他の国で高いところまで到達した技術を使い、安い労働力で生産するからだ。
 技術の飛躍的な革新により、性能が向上したり多機能になっても価格がさほど変わらなければ、価格は相対的に低下する。コストの削減や流通の簡素化、あるいは…

底本:『自分と自分以外──戦後60年と今』NHKブックス 2004年

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