VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

評論・エッセイ

千四百兆円分の身の危険

 個人の金融資産、つまり簡単に言うと貯金が、日本ぜんたいでいま千四百兆円あるという。「すごいね。それだけのかねがあれば、日本はまだまだ大丈夫だよ」などと言う人が、庶民や学者、政治家など、あらゆる領域にいる。人々がこれだけの額の貯金をしている理由を、日本人の貯金好き、消費を悪ととらえる根強い倫理観、いまを犠牲にして将来にそなえる性向などによって、彼らは説明しようとする。
 将来に関して人々が直感している不安が、その濃度を高め続け、しかも量的にも増えるいっぽうだから、人々は貯金してそのような不安に対処しようとした。そのひとま…

底本:『自分と自分以外──戦後60年と今』NHKブックス 2004年

このエントリーをはてなブックマークに追加