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評論・エッセイ

猫が階段で寝ている

 いつも乗り降りしている私鉄の駅から現在の僕の自宅まで、やや急ぎ足で歩いて三分ほどだ。その三分間の道のりの大部分は、階段によって占められている。段数は百二十段ほどある。僕の自宅があるあたりは高台になっていて、その下の駅や周辺とのあいだには、かなりの高低差がある。駅へ向かうときにはこの階段を降りる。電車を降り駅を出て自宅へと帰るときには、この階段を上がっていく。ときたま、駆け上がることもある。
 この階段を使うようになったのは、現在の自宅へ引っ越して以来だ。それまでは、おなじ駅から歩いて七、八分のところに、二十年ほど住んだ…

底本:『ピーナツ・バターで始める朝』東京書籍 2009年
初出:『酒林』2006年11月

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