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評論・エッセイ

日本語は室内用の私的な言葉だ。男と女のとりとめのない会話から始まる、思いがけないこと

 日本語は基本的には室内語だと僕は思っている。そして、現実の生活にぴったりと貼りついた具体的な場のひとつひとつのなかで、そのつど成立していく言語だ。具体的な場というものから解き放たれた上で、多少とも抽象的なところで成立していく言語ではないようだ。室内あるいはそれに準じるような私的な場で、日本語によるコミュニケーションはもっとも力を発揮する。
 室内の言葉であると同時に、日本語は私的な言葉でもある。私的な領域で私的に、あるいは主観的に用いられるとき、日本語は独特な強さを見せてくれる。相手の存在しない、あるいは相手というもの…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『「彼女」はグッド・デザイン』太田出版 1996年

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