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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

ご飯のおかずが、ご飯

「こうしておいしい料理を次々に食べて、ワインの酔いもほどよくまわってくると、頭のずっと奥の片隅に、気がつくとふと立ち上がっているのは、学生時代の記憶なんですよ。そういう年齢にさしかかってるのかなとも思いますけど、学生時代の記憶とは、とにかくいつも腹がへっていて、おかねがなくて、食うや食わずでなんとかしのいだ、ということの記憶ですからね。食欲というたいへんな欲望と直結した記憶でもあるわけで、いまみたいにおいしい料理を食べてワインを飲んでいて、これもまた食欲だとすると、対極にあった学生時代の食欲について、思い出すのかもしれませんね」
底本:『白いプラスティックのフォーク──食は自分を作ったか』NHK出版 2005年

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