食卓には花を!
アパートメントの部屋を、彼女は出てきた。彼女の部屋は三階にある。小ぶりなアパートメントだが、ユニットごとに複雑に組み合わせたかたちになっていて、このかたちの人工的なところが彼女は気に入っている。そして、住み心地は、とてもいい。
途中で何度も折れ曲がっている階段を、彼女は軽快な足のはこびで、降りていった。階段ぜんたいがテラスのような造りになっているから、普通のアパートメントでは階段が階段だけのつまらないスペースになっているが、ここではそうではなかった。
折れ曲がるたびに、お昼にちかい時間の明るい陽ざしが…
底本:片岡義男エッセイ・コレクション『「彼女」はグッド・デザイン』太田出版 1996年
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