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四歳の子供がそれを見た

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 二〇〇二年のひときわ暑かった夏に、三〇〔写真・右〕そして三一ページ〔同左〕*にある光景を、僕は写真に撮った。さかのぼること半世紀以上、一九四四年、僕が東京の目白で四歳の子供だった頃、乳母に手を引かれた毎日の散歩の途中に見た住宅地の光景と、半世紀を越える年月をへだてつつも、この二ページの光景は完璧に同一だ。根本的になんら変化していない、まったくおなじ質のままの光景だ。それは東京の住宅地のなかにあり、東京の謎はそこにある。

 東京が轟々と音を立てて動いているなら、その震源は住宅地のなかにある。労働力の再生産が営まれるのはここであり、巨額の個人資産がそこに眠り、個人消費を支える人たちはこのような道を歩いて繁華街へとおもむき、そこで消費にいそしむ。ちなみに一九四四年といえば、インパール作戦の認可から東京空襲、そしてレイテ島での決戦放棄など、アメリカを相手に始めた戦争で、日本は苦戦していた時期だ。

 その頃の僕が幼い視覚をとおして脳裏に刻んだ東京の本質的構造は、二〇〇二年となっても質的になんら変わることなく、そのまま東京の本質的な構造として、住宅地のどこと言わずいたるところで現役だ。東京のいっぽうの本質は住宅地であり、そこは細分化された土地の私有権を骨格とする、抑圧の迷路だ。

(2017年3月21日掲載、『ホームタウン東京−どこにもない故郷を探す』2003年所収 *書籍収録時のページ数を原文のまま掲載しています。

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1944年 2002年 2003年 『ホームタウン東京−どこにもない故郷を探す』 『ホームタウン東京──どこにもない故郷を探す』 戦争 東京 目白
2017年3月21日 05:30