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評論・エッセイ

3月7日 弁当

 東京都世田谷区立の、男女共学のきわめて普通の高等学校をぼくは受験して合格し、その高校を三年間でごく普通に卒業した。
 ぼくが受験する高校としてこの学校を選んでくれたのは、中学三年生のときの担任の先生だった。現在の事情をぼくはまったく知らないが、ぼくが中学生だった頃の高等学校は、ピンでもキリでもない、もののみごとに中くらいの程度の学校だったのだそうだ。その学校を先生がぼくのために選んでくれたのだから、中学三年生としてのぼくもまた、中くらいのできばえの平凡な子供だったにちがいない。
 入学試験は、三月の初旬に…

底本:『すでに遥か彼方かなた』角川文庫 一九八五年

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