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評論・エッセイ

十二月のハワイは波乗りシーズンのちょうどまんなか

 スクリーン・ドアをあけて玄関のポーチのうえに出る。気持ちの良い、さらっとした風が、全身をなでる。ポーチの木の階段を、庭へ降りる。芝生のうえを裸足で歩く。芝生は、しっとりぬれている。淡いとおり雨の雲が、さあっとまいていった雨の名残だ。
 家の板壁から庭の外周にそって、ポインセチアの花が、まっ赤に咲いている。うけとめている、明るくて透明な陽ざしのせいで、花はよりいっそう赤い。朝の風に、その花がゆれる。
 空をあおいでみる。まっ青に晴れていて、純白の薄い雲が、ところどころに散っている。十二月だが、こんな快晴の日…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『僕が書いたあの島』太田出版 1995年

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