VOYAGER

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評論・エッセイ

ジャスト・マイ・サイズ

 彼女がステーション・ワゴンを運転していた。隣の席には、彼女の同性の友人がすわっていた。
「久しぶりに晴れたわね」
 彼女が言った。
「気持ちいいわ」
 友人が答えた。
「雨の日や曇った日は、自分の気持ちが内面にむかうのね。内面に比重がかたよるけれど、今日のような晴れた日だと、内面と外面とが、ちょうど釣り合うの。内側にむかう気持ちと、外にむけて出ていく気持ちとのバランスが、とてもいいのよ」
 と運転席の彼女が言い、
「わかるような気がする…

底本:『ノートブックに誘惑された』角川文庫 1992年

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