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【特集】9.11

【特集】9.11

2022年9月8日 18:00

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2001年9月11日、アメリカで起こった同時多発テロ事件は、当時の日本の政治や経済にも大きな影響を与えました。片岡義男は9.11のきっかけとなった湾岸戦争やその後のテロとの戦いを報じる日米のTV報道を「観察」し、そこに聞こえてきた言葉を手掛かりとしてアメリカという国の本質や、日本と日本語についての論考を発表します。90年代後半から2000年代初めにかけて書かれたこれらの文章をあらためて読み返してみると、まるで現在のアメリカや国際社会、そして日本について語っているかのようです。 また、9.11のテロで崩壊したニューヨークの世界貿易センタービル(WTC)をその建設時から撮影してきた写真家・佐藤秀明さんの写真集『REQUIEM World Trade Center』(印刷版)の特別販売も行います。この機会にぜひお買い求めください。



1)大統領によれば

2001年9月11日の午前九時すぎ(現地時間)、ブッシュ米大統領はフロリダ州にある小学校を訪問していました。そこにスタッフが歩み寄り何かを耳打ちします。大統領が世界貿易センタービルに二機目のジャンボ機が激突したことを知らされた瞬間でした。その場を立ち去る際に彼が発した挨拶、そして同日夜に発表されたステートメントにはその後のアメリカのとるべき行動が語られていました。

(『影の外に出る──日本、アメリカ、戦後の分岐点』NHK出版 2004年所収)


2)大統領命令と日本

アメリカ大統領にはさまざまな権限がありますが、そのひとつに軍の最高司令官(コマンダー・イン・チーフ)としての顔があります。その意味においては、ホワイト・ハウス自体もひとつの軍隊であり、アメリカの安全を守るための「命令」は軍事同盟を結んでいる日本にも及ぶ、と彼らが考えるのは当たり前のことなのかもしれません。しかしそれは、一方で、日本の安全を脅かすことになるのかもしれません。

(『自分と自分以外──戦後60年と今』NHKブックス 2004年所収)


3)「国際社会の平和と繁栄」とは

2001年9月の同時多発テロの後、2002年にアメリカはイラクを「悪の枢軸」と名指しで批判し、翌年三月には大量破壊兵器の保有を大義名分として攻撃を開始します。12月、フセイン大統領はイラク中部で拘束されますが、その後アメリカ軍はイラクの復興と治安の回復、テロなどの破壊活動への対処といった課題への対応を迫られることになります。

(『影の外に出る──日本、アメリカ、戦後の分岐点』NHK出版 2004年所収)


4)ウエイ・オヴ・ライフを守る

1991年1月、イラクによるクウェート侵攻に対し、アメリカは有志連合による多国籍軍を組み両国国境付近に進駐を開始します。当時アメリカのニュース番組では、ブッシュ大統領がスピーチの中で「私たちのウエイ・オヴ・ライフや自由を守る」という言葉を使っていますが、そこには必要ならいつでも戦争をするという決意と準備があり、我々は必ず勝利する、という意味があります。

(『日本語の外へ』筑摩書房 1997年所収)


5)「日本はアメリカとともにあります」と首相は言った

湾岸戦争を始めるにあたり、アメリカは国連の決議を取りつけ「西側の先進文明国と、孤立する悪のイラクとの対決」という図式を作り出すことに成功します。このとき日本は財政支援のみを行い『小切手外交』と批判を浴びるのですが……。

(『日本語の外へ』筑摩書房 1997年所収)


6)仕事をすませて家へ帰ろう

湾岸戦争時、アメリカでは第二次世界大戦以来のものだというスケールで兵士の動員が行われました。それは極大から極小まで複雑で多岐におよぶ大事業ですが、ある意味で彼らは出張中の労働者という見方もできます。TVニュースに登場した若い兵士の中には「私個人としては、ほんとのことを言って、納得はいってないです」と答える人もいたと言います。

(『日本語の外へ』筑摩書房 1997年所収)


7)生まれながらにして客観をめざす言葉

日本語が主観的であるのに対して、英語は客観をめざす言語です。英語によるものの捉え方や考えかたの基本は、積極的な提案や改革の意志の中心軸および推進力としての、前進的な攻撃性にあります。これに沿って、出来るだけ多くの人を望ましい方向へ動かしていく力を最も強く発揮するのが、客観性です。そしてこの英語の構造と性能は、アメリカという国のものの考え方の基本ともなっています。

(『日本語の外へ』筑摩書房 1997年所収)


8)現実に引きずられる国

日本では何かが起こるたびに「憲法改正」を声高に叫ぶ人たちがいます。その理由の多くは「現実に対応出来ないから改正する」というものです。しかし今の社会においては、新しい現実は次々に立ち現れます。次々に現実を追えば、常に現実に引きずられることになるのは間違いありません。特に日本のように場数を踏んでいない国は……。

(『自分と自分以外──戦後60年と今』NHKブックス 2004年所収)



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片岡義男.comでは、以下の佐藤秀明さんの著作も公開しています。

『グラウンド・ゼロ』

ワールド・トレード・センターが出きあがる1970年代初頭のニューヨークが、貴重な写真と記録で語られる。


世界地図の歩き方35『世界貿易センタービル』

あったものが無となる景色 どうして悲しくフォトジェニックなのか。