コーヒーに俳句が溶けていく
この冬最初の寒気が日本列島に流れ込んでいるという日の夜、三人で寿司を食べた。いつもの私鉄沿線のほどよいところにある、僕は子供の頃から知っている店だ。先代のときは昭和そのものの寿司店であり、母親がひいきにしていたから僕もよくいっしょにいった。いまは二代目だ。寿司店の店内造形そして雰囲気にまとわりつく陳腐な固定観念のいっさいない、じつにすっきりした美しい店で、そこで食べる寿司を僕は東京でいちばん気に入っている。
三人とは、新聞社で中堅の現役を張る四十代後半の男性と、年齢はやや不詳になりつつあるが、美女であることに変わりはな…
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