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評論・エッセイ

鮎並の句を詠む

 鮎並と書いて、あいなめ、と読むらしい。当て字だろう。電車のなかに吊ってあった清酒の広告で、初めて知った。誰が見ても鮎並にしか見えない魚が一尾描いてあり、俳句がひとつ添えてあった。鮎並の皮の旨みのじっんわりと。こういう俳句だったと思う。そうね、そういうこともあるね、という程度の句だ、べつにどうということはない。じっんわりと、としたのは下世話な風情を意図したものか。
 その広告を眺めた僕と知人のふたりは、せっかくだから自分たちも鮎並の句を作ってみようか、ということになった。小田急線の上り各駅停車で四駅いくあいだ、ひとつの駅…

底本:『洋食屋から歩いて5分』東京書籍 2012年
初出:「先見日記」NTTデータ 2004年3月23日

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