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評論・エッセイ

旅先にうまい水あり

「旅先にうまい水あり」というフレーズは、友人からもらったものだ。このタイトルでなにか書いてみろと言って、僕にくれたのだ。題名だけではなくついでに内容ももらえるとありがたい、と僕は言い、そこからふたりで水の話をした。旅先で飲んだおいしい水についての話だ。
 旅先で飲んだおいしい水。そのおいしさを忘れることが出来ず、いまでも覚えている水。記憶のなかをいくら探しても、僕にはそんな水はなかった。なにかあるだろう、考えてみろ、と友人は言った。旅先で飲んだおいしい水について考えた結果、ようやくひとつだけ思い浮かべることが出来た。それ…

底本:『洋食屋から歩いて5分』東京書籍 二〇一二年

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