またたく星が、にじんでこぼれる
五月のはじめにアメリカから友人が日本に来た。ぼくの家に泊まった初日の夜、彼はベッド・ルームのベッドの、二段になったマットレスの上段だけを居間に持って来て、ぼくは今夜はここで寝る、と言った。
居間は、かなり広い。そして南側と西側が、いちめんガラス戸になっている。フロアから天井まで、透明な大きなガラスの戸だ。
このガラス戸にマットレスの頭のほうをくっつけ、彼はあおむけに横たわってみせ、「ほら、こうすると、夜空の空間や星や月、それに、庭の樹が見えるんだ」と、彼はぼくに説明してくれた。
「庭に寝…
底本:『コーヒーもう一杯』角川文庫 1980年
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