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エッセイ

弁当の秋

 自分が久しく食べていないものはなにだろうか、と秋の始まりの街を歩きながら、ふと思った。食欲の季節と関係しているのだろうか。月見うどん、ワンタン、栗きんとん、レバーステーキ、氷白玉、赤いシロップをかけたかき氷。十年、二十年どころではなく、ひょっとしたら三十年、四十年と食べていないものを、ひとつずつ思い出しては楽しんでいく途中、もっと大きな閃きがあった。自分がもっとも長いあいだ食べていないもの、それは弁当だ。
 弁当を、僕はいつから食べていないだろうか。子供の頃に母親が作って持たせてくれた弁当の記憶は、ほとんどの人が持ってい…

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