僕はこうして日本語を覚えた
日本で育っている子供は、その子供をいつも取り巻いている日常のなかで、日本語を覚えていく。身辺にいる大人たちが喋るのを聞いては、覚えていく。育っていく環境という、成り行きの見本のような日常のなかに、どの子供もいる。その成り行きのなかで、言葉を覚えていく。
教材はいたるところにある。身辺の人たちが喋る言葉だけが教材ではない。たとえば子供は、漫画を読む。その子供は小学生になったばかりの年齢だとしようか。そしてその子供は、僕だと思っていい。読んでいく漫画のこまのなかで、土木工事をしているらしい大人の男がひとり、土管にすわって…
底本:『中央公論』2019年12月号
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