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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

大瀧詠一追悼 僕があたえられた役割、書くということ 成瀬巳喜男をめぐる 第四回

 ゆきこは辻という名前なのだと、ようやく僕は発見した。旅館の女性従業員が、ゆきこに呼びかけるとき、辻さん、と言っているカットがあった。仮にゆきこと平仮名で書いているが、ゆきこをもし漢字で書くなら、どんな字を使うのかについては、まだ不明のままだ。
 ゆきこのかつてのホステス仲間に静江という女性がいる。いまでもゆきこは静江と親しくつきあっている。その静江は、大阪の実業家である葛西という男性の、東京における妻のような存在になり、一軒の家をあてがわれ、毎月の生活費ももらって、かなり楽に生活している。こういう状態を、静江の言いかた…