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エッセイ

洋食屋から歩いて五分で古本屋

 中年の男性ひとり。年齢不詳という佳境にさしかかっているがゆえに、妙齢という言葉がまさにふさわしくなっている美しい女性。そして僕。この三人が秋の初めのある日の夕方、洋食店の前に立った。
 ドアの両脇に大きくウインドーがあった。どちらのウインドーにも、その内部の空間には何段もの棚があり、そのすべてを料理サンプルがびっしりと埋めていた。「当店のメニューにありますすべての料理がサンプルでご覧になれます」という但し書きが、中央の棚のまんなかに貼ってあった。
 感銘を受けた僕たちは左右のウインドーを行ったり来たりしな…

底本:『洋食屋から歩いて5分』東京書籍 2012年
初出:雑誌『AZUR』東京ニュース通信社 2011年10月号

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