料理本の思想
毎日の食事でいちばん大切なのは、おいしく食べることだと僕は思う。おいしい食べかたの具体策はさまざまにあるが、基本中の基本は、自分で作って自分で食べることだ。
自分で作って自分で食べる幾歳月の蓄積のなかで、食べることの抽象度を高め、なんらかの思想に到達したい、というのが僕の願いだ。そして今日もうじき食べるはずの次の食事をおいしくするには、自分に可能なかぎりおいしく作らなくてはいけない。
おいしく作るための基本は、正しい知識の上に立つ、ほんのちょっとした工夫とコツなのだ。これもまた幾歳月のなかでおのずから…
底本:『洋食屋から歩いて5分』東京書籍 2012年
初出:『THE NIKKEI MAGAZINE』92号 2010年12月19日
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