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エッセイ

風船ガムを求めて太平洋を渡る

 その年の九月初め、東京ドームでの日本プロ野球のナイト・ゲームは、ヤクルト対巨人だった。僕はTVをまったく見ないが、野球は好きだ。たまたまそこでオンになっていたTVがこのゲームを中継していた。ほんのしばらくのあいだ、僕は画面を見ていた。
 ゲームは始まったばかりだった。巨人の投手、セス・グライシンガーは、ノー・アウトでヤクルトの打者に四球をあたえた。グライシンガーはガムを嚙んでいた。打者が一塁へと走るのを横目で見ながら、グライシンガーは、嚙んでいたガムで口の外に風船をふくらませた。その風船がはじけたところで、彼は捕手から…

底本:『洋食屋から歩いて5分』東京書籍 2012年
初出:雑誌『AZUR』東京ニュース通信社 2009年12月号

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