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評論・エッセイ

どこにもないハワイへの行きかた

 ハワイが島ではなくなっていく、とぼくが、ある日、自覚する。その自覚を土台として、センチメンタルな感情のたかまりが、おこってくる。まだ島としての香りや感情の残っている部分を、なくなってしまわないうちに、まるで落葉をひろい集めるようにひろって歩こう、というセンチメンタルな気持ちのたかまりだ。
 ハワイが、ハワイという独特な香りをたたえた島であったのは、いまから十年以上もまえのことだ。十年まえ、そしてそれ以前はたしかにハワイは島であったのだが、この十年間に、ハワイは島としての香りをかたっぱしから削りとられてきた。


底本:片岡義男エッセイ・コレクション『僕が書いたあの島』太田出版 1995年

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