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評論・エッセイ

上を向いてスキヤキ

 イギリスのパイというレーベルのレコード会社のヘッドが、商用で一九六二年の東京を訪れた。そのときちょうど大ヒットしていた坂本九の「上を向いて歩こう」を彼は聴いてたいそう気に入り、レコードを手に入れた。そしてそれを持って帰国し、ケニー・ボールというミュージシャンに聴かせたところ、彼もその曲に強い共感を示した。だからケニー・ボールのグループによるシングル盤として、「上を向いて歩こう」のカヴァーをさっそく作ることになった。
「上を向いて歩こう」という日本語題名をそのままローマ字書きしても、イギリスの人たちにとってはなんの意味も…

底本:『ピーナツ・バターで始める朝』東京書籍 2009年