宇宙の時間と空間のなかへ
人は時間と空間のなかに生きている。ここで僕が使う、時間という言葉も空間という言葉も、ごく普通の意味での、時間および空間だ。空間は、主としていつもの自分の場所だ。自宅や自分の部屋、勤め先、仕事場、いつもいく店、好きな旅行先など、要するに平凡な日常生活を構成する雑多な出来事の連続する現場だ。
この現場には、時間が流れている。時計で計ることの出来る、誰にとってもおなじ二十四時間の、一本の線だったりスケジュール帳のます目だったりする、例のあの時間だ。この時間が、日常生活を構成する雑多な出来事を、ひとつに縫って連ねている。この…
底本:片岡義男エッセイ・コレクション『僕が書いたあの島』1995年
「スタジオ・ボイス」1994年 7月号 特集「RIDE ON」所収
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