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評論・エッセイ

子供のままの自分

 僕はじつは子供のままだ。子供の僕とは、五歳くらいから十七、八歳くらいまでの、十年を少しだけ越える期間にまたがる僕だ。その僕がいまもまだ僕のなかにいる。ああ、こういう自分は五、六歳の頃の自分とまったく変わらないな、と思うことがいまでもしばしばある。どんな自分なのかその内容によって、該当する過去の年齢はそのつど変化するけれど、自分はなんにも変わってないな、と思うときのレファレンスとしての自分は、子供の頃の自分だ。
 わかりやすい話をひとつするなら、僕は学校へいきたくない子供だった。僕は戦後の教育を受けた最初の世代だ。小学校…

底本:『自分と自分以外──戦後60年と今』NHKブックス 2004年

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