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評論・エッセイ

幼い頃の自分について語る


 ぼくは六歳から十四歳くらいまでの期間を、瀬戸内海に面したふたつの町で過ごしました。もうずいぶん以前のことです。どのくらい以前かというと、いまの瀬戸内海は、ある種の文脈では「死の海」などと呼ばれるほどにさまざまに汚染された海になっていますが、ぼくが子供だった頃には、その瀬戸内海に汚染源はまだなにひとつなかったのです。そのくらい以前のことです。当時でも瀬戸内海に沿って工場がいくつもあったのですが、戦争で叩きつぶされ、まだ活動を再開していなかったのです。
 戦争が終わった世のなかで、大人たちは、自分たちの生…

底本:『きみを愛するトースト』角川文庫 1989年

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