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エッセイ

雨の夜のドライ・ジン

 ドライ・ジンを飲んだのがいけなかった。しかも、夜中の二時だ。こんな時間まで起きていることは、ぼくの日常生活のなかには、あまりない。そして、夜中の二時に、室温の、したがってほんのりと生あたたかい感じのするドライ・ジンをストレートで飲むことも、めったにない。
 だが、そのドライ・ジンは、おいしかった。酒は、どんな酒でも、味覚的には非常に面白く楽しい。その面白さにつられて飲んでいると、やがて酔ってくるのが、鬱陶しいけれど。
 ドライ・ジンの最初のひと口が食道をくだっていくみじかい時間のなかで、ぼくはギムレットを…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『本を読む人』太田出版 1995年
『コーヒーもう一杯』角川文庫 1980年所収

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