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片岡義男.com 全著作電子化計画

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書評

ある日の午後、僕は「本のオールタイム・ベスト10を選んでください」と、電話で頼まれた

 僕にとっていつまでも大事な本の一方の極に、シャーウッド・アンダスンの『ワインズバーグ・オハイオ』(邦訳は新潮文庫)がある。
 十四、五歳の頃、自宅にたくさんあった英語の本のなかからたまたまこれを選んで読み、大きな感銘を僕は受けた。
 それまでの僕は、小説とは暇つぶしの娯楽読物だと理解していたから、そうではない小説にはじめて触れて、僕は驚いた。心の底から驚愕したと言っていい。言葉で小説を作り出し、その小説によってこんなことまで可能なのかと、小説の可能性にじつはこのとき僕は目覚めた。
 いま僕は…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『本を読む人』太田出版 1995年