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エッセイ

一冊の素晴らしい本を読んだ。そして僕は、地球に別れを告げる旅に出た

 忘れもしない一九六八年、僕はレイチェル・カースンの書いた『サイレント・スプリング』(邦訳は新潮文庫『沈黙の春』)という本を読んだ。人間が自分たちの都合のために作り出したさまざまな化学薬品、特に殺虫剤が、地球の生態系に対していかに潰滅的に作用するかについて、もの静かに立証的に解き明かした本だ。
 僕は夢中で読み、読んだあとぼうぜんとなった。地球の命が、遠からずかならず終わることを、一冊の本をとおして直感すれば、誰だってぼうぜんとなるだろう。やがて立ちなおった僕は、旅に出ることを思い立った。地球はほどなくその生命を人間によ…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『本を読む人』太田出版 1995年

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