言葉を捨てた人たちの便利機能満載機種
僕はいまこの文章をオアシス・ライトのもっとも初期のワープロ(以下、WPと略す)を使って書いている。どこを捜してもいまはもう見つけることの難しい旧タイプのものだが、短いエッセイを書くにはこれで充分なので、いまでも使っている。使いはじめて十年ちかくになるけれど、一度も故障していない。ただし、現在は故障寸前のようだ。液晶の表示は八文字しかない。記憶容量は六十行だ。いっぱいになると、ゆっくりした速度でプリント・アウトする。電源は電池だ。そして紙は感熱紙を使っている。
文章を書いていくときには、僕は頭のなかで書く。紙に手書きす…
底本:『ノートブックに誘惑された』角川文庫 1992年
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