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評論・エッセイ

彼女が雨を見る態度

 1 
 秋の雨の頃、仕事の帰りに彼女は京都に一泊した。京都は雨だった。その雨の京都から、彼女は、親しい友人に宛てて、絵葉書を出した。絵葉書に彼女は次のように書いた。
『雨の京都で蛇の目を買いました。さっそく、それをさして散歩しました。夕方の雨の彼方から、鐘の音が聞こえてきたのです。私がさしている蛇の目の上に落ちる雨の、滴のひとつひとつのなかに、鐘の音が入りこんでいくように、私は感じました』
 2 
 どしゃ降りの雨の日、友人を隣りの席に乗せて、彼女は東京の高速道路を自動車で走っ…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『「彼女」はグッド・デザイン』太田出版 1996年